「……残酷なタトゥばかりだ」
「そうっすかね」
僕の身体の隅々に残る、シトウの人々の終焉。
なんでこんな物を彫ったんだっけ。
別に、人の死が好きってわけじゃない。
ただ、僕は。
誰でも持っているものを、この身体に刻むことに興味がなかった。
僕はずっと、何者かになりたかったから。
きっと、だから。
僕の眼で見たものを刻んだ。
誰かが間違えたこと。
誰かが壊れたこと。
誰かが愛したこと。
どうやって一人の人間が終わったのか。
シトウの眼である僕が、見届けたものを。
「ずっと言ってたじゃないか。野間くん」
「何をっすか?」
「『背中にスミは入れない』って」
「ああ」
だって、背中は。
自分には見えない場所だから。
「どこより大きなキャンバスなのに、背中にだけ彫らないのが、僕にはおかしくてね」
そう言って、彫師は口に笑みをつくり、施術を始める。
「だから背中にスミを彫るって連絡もらったとき、ワクワクした」
「ワクワク?」
「こんな身体中に混沌を描く野間くんが、背中に残すものは何だろうってね」
「あーハイ。ガッカリしました?」
「ガッカリだなんてとんでもない。デッサンに力が入ったよ。まぁ、3回ボツったけど」
彫師はひとしきり話すと、施術に集中した。
僕は脂汗を掻きながら、悶えるような痛みに耐えた。


