地下の売人は猛スピードで車を走らせ続けた。
どれくらい走っただろう。
よく知った景色から、いつの間にか全く知らない景色へと移り。
やがて物静かな住宅街に入ると、一軒の古びたアパートの前で停車した。
地下の売人が車から降りる。
隣のデックも「よっこらせ……」と、反対側のドアから車を出た。
――ガチャ、と。
開かれたこちら側のドアの前には、地下の売人が立っていた。
「行こっか」
ニッコリ笑った彼から、こちらに延びてくる手。
「………」
私はそれをパシ、と音を立てて振り払った。
彼がどんな顔をしているかはわからない。
私は俯いて、ガタガタと震えた自分の両ひざと、その上に乗った両手を見ていた。
「寒い?」
「………」
「どこが辛い?」
ふわりとお香の香りが鼻を掠めた。
視界の端に、銀色に光った白い髪が映る。
地下の売人の両腕が、私を包んでいた。
身体の熱を渡すように、背中を擦って、身体を密着させてくる。
私が「いやっ」と突っぱねれば、簡単に抱擁は解けて。
その代わりに膝裏と背中に腕が回って、横抱きに抱えられたまま車内から出された。
「すぐに元気になるよ。僕が治してあげるから」
ふふん、と機嫌よく笑った地下の売人に抱えられたまま、私の身体は運ばれていく。


