「おーっす。お疲れっす」
「本当にきたね」
「本当にってなんすか。毎回きっちり予約入れてるのに」
「あんま続けて彫るモンじゃないからね」
「背中が疼くんすよ。手っ取り早く完成させたくって」
僕は付き合いの長い彫師の元にやってきた。
シャツを脱ぎ、上半身を晒したところで、マットの上にゴロンと寝そべる。
「よろしくおねしゃす!」
「あー、この身体ともこれでお別れかぁ」
「そっすね。ここが完成するとあとは本当に入れるところがない気がしますね」
刺青だらけの自分の身体。
大半のスミはこの彫師に彫ってもらった。
「本当、面白いスミばかり。野間くんの要望通りにするのにこれまで何万回と打合せしたろうね?」
「何万回は大げさっす」
笑う僕に、彫師は自らの彫った右腕のウロボロスを、感慨深い顔つきでなぞった。
「大げさじゃないよ。君のスミは本当、前例のないものばかりで苦労させられてきた」
前例のないもの……か。
確かに、僕のスミはパンフレットから選び出したものがない。
構想を練り、この彫師にアートを考えてもらった。
「僕の身体はメモ帳のようなものっすから」
僕の身体のスミは、シトウで見た人々の記憶。
紫藤さんの傍で垣間見た、それぞれの結末を書きなぐった……落書きだ。


