余所者-よそもの-【 3 】



カナコさんの目の瞬きが多くなってきた。


「カナコさん。今から言うことを覚えておけますか?」

「なに……?」


僕は茶色い紙袋を、カナコさんに見せた。


「これ、薬です」

「うん」

「このベッドの下に隠しますから、メモの通りに薬を飲んでください」

「……え?」


地下の売人から預かった薬を、カナコさんに渡す。


「どう……して?薬は、野間くんが」

「僕はこれから野暮用がありまして」

「………」

「しばらく、ここには来れそうにないので」

「……帰って……こない、の?」


カナコさんは眠気に上下する瞼をごしごしと擦った。


「擦ると腫れちゃうっすよ」


僕はカナコさんの肩を押し、そっとベッドに寝かせる。


「眠ってください」

「いや……いや、野間くん……っ」

「………」

「眠りたく、ない……っ。話……を」


『行かないで』と僕に向かってすがるように伸ばされた、細い手首をそっと握った。


話……か。

カナコさんとは、あの扉越しにたくさん会話をしたな。


「カナコさん」

「……野間くん、」

「外は、だんだん暖かくなってきました」

「きい……て」

「もうすぐ、春が来ます」

「のまく……」

「少し眠ればきっと。カナコさんも会いたい人に会えますよ」

「………」

「………」

「………」



「……僕は賭けます。あなたが生きたいと願った、その先に」



眠るカナコさんの目の横に、握っていた手をそっと返した。




――さて。

大仕事の前に、僕にはまだやることがある。