――ガタガタ、と。
カナコさんの部屋から、しばらく物音が立っていた。
紫藤さんは昨日一昨日と、二日連続でカナコさんの部屋に立てこもった。
その間、部屋の中で何があったかはわからない。
それでも、カナコさんの身に何かがあったことは明白だった。
「カナコさん」
「………」
「カナコさん」
僕に構う余裕すらないようだ。
「……カナコさん、入りますよ」
鍵を差し込み、ドアノブを捻れば。
――ドン、と。
カナコさんが向こう側から開きかけたドアを押し込んだ。
「……酷い状態なんでしょ」
「ううん。大丈夫」
「薬を渡します」
「ダメ、今は」
「カナコさん」
「お願い。見られたくないの……」
いつもなら。
どれだけ錯乱してようが、僕は彼女の意志を優先する。
でも――今日は。
「開けます。退いてください」
「やだっ」
「嫌なら目を瞑ってますから」
「だめ。薬も要らない」
「いいえ」
「また今度でいい……」
「僕に、”今度”はありません」
そう言うと、軽くなった扉。
押し開き、中へと入る。


