「………」
この人は。
覚悟がないんじゃない。
この人の覚悟は、――死なない覚悟。
それは、突拍子もなく現れた、第三の答えだった。
紫藤さんを救うなら。
紫藤さん自身を、どうにかするしかないと思っていた。
――シトウを潰す。
誰も死なせず。
誰も殺さず。
紫藤さんを……
『シトウの紫藤』という役割の檻から、逃がす。
――そこに、一筋の希望が見えた気がした。
出来るか。
そんな大それたことを。
この男に。
「………」
いや、無理だ。
地下の売人がいても。
露天街を巻き込んだとしても。
……足りない。
僕は視線を落とし、右手中指の目玉と見つめ合う。
――なら。
「僕は……シトウの眼だ」
「……何の話だ」
「シトウの全ての情報は、僕を介す」
賭けよう。
目の前のこの、――生きる覚悟に。


