余所者-よそもの-【 3 】



瑞生さんは一度瞳を伏せた。

しばらくの沈黙のあと、僕をまっすぐに見つめる。



「俺は、死ねない」



……なんだ、それ。

ふざけるな。



「覚悟のないヤツに、紫藤さんを圧倒できるわけがない」

「そうか。でも、死ぬことも殺すことも。もう俺にはできない」


死ぬ覚悟のないヤツには無理。

かといって。

紫藤さんを前にすれば、死ぬ覚悟を持ったヤツにも無理。


もう、ない。

道なんて。


肩を落とした僕の耳に、瑞生さんの声が届く。

静かなのに、いやに温度を持っていた。



「アイツは……」

「………」

「俺の店や仲間を守るために、地獄にだって飛び込んでいく」

「………」

「目の前で、この街で。もう、何かを失うことが嫌なんだろう」



なぜだか、眼を逸らせない。

そう語る瑞生さんの目に、カナコさんの姿が映っている気がした。



「だから、俺は決めた」


「……何を、」





「俺は――紫藤の造った、この世界を壊す」





その瞬間。

ざわめいていた僕の胸の中が、不思議なくらい静かになった。