「カナコさんの状態を知るためだけに、手の内を僕に知らせたんですか」
「知らせるも何も、言って困ることは言ってない」
「警戒されるとは思わないんですか」
「地下の売人が入った時点で、警戒ならもうしてるだろ」
「………」
「今更何か口零したところで、こちらの状況は変わらない」
この人は……何がしたいんだ。
人の思考を散々掻き回しておいて。
「……なぁ。教えてくれ」
「………」
「かぁこは……アイツは、どうしてる」
その懇願するような声に、思わず息を呑んだ。
「………」
僕は爪が食い込むほど、更に拳をきつく握り直す。
そうしないと、込み上げてくるものを抑えられなかった。
そんなにカナコさんのことを知りたいのなら。
いいさ、教えてやる。
「――……『ユキさん』」
僕は、ぽつりと、それを落とした。
「『ユキさん』、『ユキさん』」
どうしたって、つっかえそうになる胸。
一度、大きく息を吸い込んだ。
「……カナコさんは。ドラッグに意識が飲み込まれそうになるたびに」
「………」
「こうやって、何度も、何度も、あなたの名前を呼んでいます」
あの震える声を、思い出す。
誰もいない部屋で、縋りつくように。
延々と、返事のない名前を、呼び続けていた。
「彼女は闘ってます。自分の中のドラッグと、この状況と」


