「………」
僕は頭の熱を冷ますように、深く息を吐いた。
それでも拳に入った力はなかなか解けない。
イライラする。
どいつもこいつも。
「なんか言ったらどうなんです」
隣を見る。
瑞生さんの表情は、話しだしたときと何一つ変わりがない。
その落ち着き払った顔に、僕の眉間が勝手に強張った。
「お前の話はそれで終わりか?」
何かをこらえている仕草もない。
余裕、とも違う。
苛立った僕をあざ笑うでもない。
ただ、何か退屈な講義を聞いていたかのような、その顔つき。
……気に食わない。
「『勝てない』。そう結論付けてくれて構わない」
「……カナコさんを助けたいんじゃないんですか?」
「何を勘違いしてるのか知らないけど」
そう言った瑞生さんの瞳が、静かに細まる。
まるで……僕の浅はかさを、見透かしているみたいだ。
「俺が知りたいのは、アイツのことだけ」
おかしいだろ。
カナコさんを知りたい理由の先に、取り返すって目的があるはずだ。
なぜ、食いつかない。
これじゃまるで、僕が空回りをしたみたいじゃないか。


