瑞生さんと正面から顔を合わせるのは、二度目。
一度目は、紫藤さんに会わせるため、AnBarへカナコさんを迎えに行ったときだ。
――『行きましょうか、カナコさん』
ロクな対面じゃなかった。
――『シトウの紫藤は、女一人の面倒も見れない程、甲斐性がないのか?』
ただ、このとき僕は知った。
露天街の外れで、細々と商売をするこの男。
瑞生さんは、ただ者ではない。
特にシトウに害のないはずのこの男を、紫藤さんは警戒とまでは言わなくとも、気に留めていた。
この男は、ずっと妙なんだ。
まるで獲物を前に、動かないだけの獣のような。
何もしてないのに、いつでも何か出来る――そんな気配だけを漂わせていた。
「………」
初対面のあの時と同じ。
背筋にゾクゾクする感覚を思い出しながら、僕は瑞生さんの隣に腰かけた。
視線の端で、瑞生さんがウイスキーの入ったロックグラスに手を伸ばす。
カウンターの上で傾けられたグラスに、カラン、と氷の音が冷たく響いた。


