その言葉は、なかなか僕の中で溶けない。
溶けきれない。
喉につっかえたような何かを抱えていた。
――そんなある日だった。
僕は自分の保有する店の集金へ向かった。
リビドーから歩いて十分。
集合アパートのような見た目の雑居ビルに入る、寂れた小さなBAR。
重い扉を押し開け、店の中に入る。
「お疲れ様です」
仲間の挨拶に返事もせず、視線を走らせた。
ここは、仲間内で使うことを目的とした場所。
客が来ることは滅多にない。
それが、七つ並んだカウンターチェアの最奥。
静かに腰掛けた……一人の、客人。
「………」
一番目立たない場所に座っているくせに。
その男の放つ存在感から、目が離せない。
僕は視線を固定したまま、カウンターの中にいた仲間に短く指示をした。
「BGM切れ」
「おっす」
「そんで、ここを出ろ」
僕は突っ立ったまま。
仲間がこの空間を出ていくまで、待った。


