「………」
奥歯が軋む。
腹が立って、腹が立って、仕方がない。
「それは違うよ……」
やがて、ぽつりと落ちた声。
視線を合わせれば、彼女は困ったような顔を少し伏せた。
「私は、生きたいの」
彼女の唇から響いた言葉。
僕の身体から、一瞬で力が抜ける。
目を丸めて、噛みしめていた奥歯も離れた。
考えていた真逆の回答に、思考が追いつかない。
『生きたい』……?
「生きたいから、」
「………」
「みんなにも、生きていてほしい」
「………」
「それだけだよ」
どうして……この人は。
こんなところに閉じ込められて。
こんなに壊されておきながら。
――『みんなにも』
カナコさんは、まるで。
紫藤さんにさえ、生きていてほしいと、願っている。


