自分が紫藤さんにどんな仕打ちを受けているか、わかってないのか。
わかってないから、紫藤さんのことを心配することができるのか。
どうして、自分のことより他人に目がいく。
「………」
「………」
思わず張り上げた僕の声に、カナコさんは小さく肩を竦めた。
細い指先でギュッと布団を握りしめ、こらえていた感情の欠片を吐き出すように、ぽつりと零した。
「AnBarが、大事だから」
その声には『ここから出たい』の感情を感じる。
「………」
カナコさん。
あなたもですか。
紫藤さんも。
地下の売人も。
みんな自分の命を平気で投げる。
そして、目の前のこの人まで。
「大事なものを守るためなら」
「………」
「死んだって構わないって言うんですか」
そう言った僕に、カナコさんは目を丸める。
「……野間くん?」
そして、やっぱり心配そうな顔で、僕の顔を覗き込む。


