カナコさんはベッドで眠っていた。
僕は、茶色い紙袋を握りしめ。
紫藤さんの定めた不可侵領域を、一歩、また一歩と足を踏み入れた。
ベッドに横たわる彼女に近づき、目を落とせば。
「………」
以前。
地下の売人がここに侵入し、顔を見たときよりも弱っていることがよくわかる。
不健康に痩せたし、顔色だって悪い。
何より。
眠っていると思っていた彼女の目は、開いていた。
僕とも目が合っている。
それでも、反応を示さない。
地下の売人の言っていた通りだ。
――『まともに眠れてないはずなんだ』
声のしないときは、眠っているものだと思っていた。
僕の目の前に横たわる現実。
この目に映る、事実。
僕の身体は驚くほど自然に動いた。
地下の売人から受け取った、茶色い紙袋の中身を開ける。


