――何度、深呼吸しただろう。 扉の前。 僕は一本の鍵を、右手に握りしめていた。 意気地なしめ。 胸の中で毒づいてから、震える手で鍵を差し込む。 「………」 ダメだ、回らない。 手汗で滑りそうになる鍵を掴み、一度抜いた。 もう一度、奥までグッと差し込む。 すると――カチ、と。 小さな音がした。 「……開いた」 紫藤さんしか持っていないはずの、最奥の扉。 ――僕はその合鍵を、勝手につくった。 最後にもう一度、深く息を吐く。 今にも飛び出そうな心臓。 ノブを握れば……扉が、開く。