誰も紫藤さんを治せない。
治し方がわからない。
僕にだって、分からない。
――何が……『シトウの眼』だ。
「……っ」
思わず、――ダンッ!とカウンター台を叩きつけた。
すると、扉の奥から「野間くん……?」と。
今にも消えそうな声が、届いた。
「………」
もう、消えないでほしい。
生きてほしい。
カナコさんにも、紫藤さんにも。
死の覚悟なんて。
死の結末なんて。
もう、たくさんだ。
――『だったらせめて、あの人の心を守ってくれ』
「………」
僕は隣のチェアに置いていたバッグから、袋を取り出した。
――茶色い、紙袋。
地下の売人に託されたもの。
紫藤さんの治し方はわからない。
でも。
――”これ以上壊すこと”。
それなら、僕にも止められる……。
僕は、最奥の扉を見据え。
手の中の紙袋を、強く、強く握りしめた。
今、――もう一度。
『視る』だけを、やめる。


