『ケンタロウ』
僕をそう呼んだ、先輩。
先輩が小さく営んでいたバイク屋は、紫藤さんの手によって更地にされた。
やがてそこに、一軒の小さな店が建った。
紫藤さんは建物が完成すると「ここを拠点にする」と、幹部を集結させた。
真っ新なカウンターの上に、一枚の大きなプレートが乗せられる。
冷たいアルミ素材の、ずっしりと重たいそれは――表に掲げない、ここの看板だった。
「Re:bido……?」
「………」
「どういう意味っすか?」
プレートの文字を読み上げた僕に、紫藤さんは煙草を吹かしながら。
視線も合わせずに、口を開く。
「libidoは――強烈な衝動だ」
「『Re:』ってなんすか。返信?」
「衝動は、いつか己に返る」
「……なんか、縁起悪くありません?」
「何言ってんだ、お前」
「だって」
「人の恨みつらみごと、シトウの街を喰らう」
「………」
「……見返りなんざ、覚悟の上だ」


