役割を与えられたのは、何も僕だけじゃない。
紫藤さんは人を拾っては、その人間に役割を与えていった。
喧嘩しかできないヤツには、街の警備を。
頭しか使えないヤツには、街でビジネスを。
行く場所のないヤツには、寝床を与えたし、何が出来るかを一緒に考えた。
終わりの街。
シトウに流れ着く、荒くれもの。
行き場を失くし、自暴自棄になった人間が。
紫藤さんのそばでは、何者かになれた。
生きる理由――進む道を、次々にみつけていった。
みんなが紫藤さんに憧れ、迷わずついていく。
『紫藤さんなら勝つ』
『紫藤さんがいれば大丈夫』
僕たちは、紫藤さんがいれば道に迷わない。
だから、誰も気付けなかった。
その信頼を注げば注ぐほど。
いつしか紫藤さんは、弱さを見せることさえ許されなくなっていった。
勝たなくてはいけない。
倒れてはいけない。
勝ち続けなくてはならない。
街中の人間に生きるための役割を与え続けた、紫藤さんを。
『シトウの紫藤』という、二度と降りられない役割の中に、閉じ込めた。
――自分たちが、生き続けるために。


