「お前は、視ろ」
「見る?何をですか?」
「全部だ」
……全部、とは。
「誰が何を言った。どこで何が起きた。噂じゃなく、事実だけ拾って集めて、俺に持ってこい」
そうして、この日。
シトウを生きる僕に、大きな役割が与えられた。
街の情報を集め、集約し。
漏れなく、紫藤さんへ伝達する。
紫藤さんはもう喧嘩はするな、と言ったけれど。
混沌を極めるこの街で事実を最後まで見届けるためには、最低限の強さは必要だった。
僕は視るために。
ただ、見続けるために。
必死にこの身体を鍛えた。
そして。
暇を見つけては、この身体に刺青を刻んだ。
無駄に喧嘩を吹っ掛けられないよう、脅しをつけるために。
安直だが、これが手っ取り早かった。
一番最初に彫ったのは、右手中指。
目玉のタトゥ。
紫藤さんにもらった『シトウの眼』の、象徴。


