僕は紫藤さんの部下になった。
毎日が、生きるか死ぬかだった。
大げさでもなんでもない。
紫藤さんは毎日誰かに喧嘩をふっかけられていた。
周囲にいる以上、僕も自ずと戦いに参加するわけだが、これがちっとも役に立たなかった。
僕は喧嘩が強くない。
というか、弱かった。
――とある日。
紫藤さん不在の中、喧嘩をした。
僕を含め、数人が地面に転がる中。
どこからともなくやってきた紫藤さんが、僕の目の前に屈む。
パンパンに腫れた顔。
片目は切れているのか、開かない。
紫藤さんはそんな僕を見て、いたずらに笑っている。
「お前、弱ぇな」
「……知ってますよ」
「んで?」
その短い問いかけに、僕は脳みそを奮い立たせた。
さっきこの目で見た複数の情報を、なるべく分かりやすく、瞬時に整理する。
「……相手は六人。最初に殴ってきたのは赤いパーカーの髭面の男。右手にメリケンサックみたいな指輪をはめてます。残りの五人は素手。逃げたのは二人。赤のパーカー男と、その女です。北側の路地に抜けました」
そこまで説明して、「……あ」と、追加で伝えなきゃいけないことを思い出す。
「なんだ」
「発端は僕っす。女に声をかけました」
「それはお前が悪ぃだろ」
「はい。この間紫藤さんの店で金抜いてバックレたキャバ嬢に似てて。間違えました」


