「………」
「ここの仲間か」
「……仲間ってほどでは。ただ高校の先輩で」
「何しにきた」
「特に、用事は……」
曖昧になって答えると、男は足をどんどん中へと進めていく。
「あ、あの!」
僕はその背中に声をかけると、振り返りもせずに返事が返ってきた。
「なんだ」
「先輩、どこ行ったか知ってます?」
「………」
男はしばらく沈黙した後、ぼそりと零した。
「いねぇよ」
「居ない?」
「ここに居たヤツは、二度とここに帰ってくることはねぇ」
先輩は、もう帰らない。
どうして。
犬を置いてどこに行ったんだ。
――『近いうちによぉ。そいつ、ブチかましてやるんだ』
もしかして、先輩……
「そっすか……じゃあ、いいっすかね?」
「何がだ」
「ホント言うと僕、寝るとこなくて。犬の世話もあるし、ここ使わせてもらうかなって」
「………」


