「ほら、飯だ、ブウ!」
とある日。
犬の飯を用意する先輩。
「あれ?犬の名前チビじゃなかったでしたっけ」
「拾ったときはあんなにチビだったのによー。ブクブクブクブク肥えやがって。デカくなったから”ブウ”にしたんだ」
「犬の改名とか、初めて聞いたっすよ」
ガツガツと飯を食う犬を二人で見ていると、ケタケタと笑っていた先輩がふいに真顔になった。
「なぁ。お前さー。紫藤 怜って知ってるか?」
「ああ、聞いたことあるっすね。シトウで最近ずいぶん有名だとか」
「やっぱさすがのお前でも知ってるよなー」
「その人がどうしたんですか?」
僕がそう尋ねると、先輩はニヒヒと悪だくみの顔をする。
「近いうちによぉ。そいつ、ブチかましてやるんだ。デカい面してやがっからよぉ」
「へぇ」
「お前、混ざるか?」
「混ざる?」
「上手くいきゃ、一躍有名人だぞぉ?」
僕は間髪いれずに答えた。
「いや、いいっす。僕そういうの向いてないんで」
「そうか」
「でも面白そうなので、また話でも聞かせてください」
断ったものの。
その日帰ってから、ずっと気になってた。
……紫藤って、どんなヤツだろう。
ブチかますって、何をするんだろう。


