それから数ヵ月。
先輩は高校を卒業すると、バイク屋を始めた。
修理専門の、主に改造に特化した店らしい。
久しぶりに先輩と街中で偶然すれ違った僕は、ほとんど拉致みたいな形で店まで連れて来られた。
「……なんもねぇっすね」
雑草の生い茂る、空地の奥。
倉庫みたいな殺風景な空間。
そこにバイク数台と工具が無造作に散らかっている。
オイルの匂いに包まれながら、先輩と話していると、――ワン!と奥から犬の鳴き声がした。
「犬……?」
「そー。この間拾ったんだ」
吠える犬の声を辿って、奥を覗き込めば。
水道の蛇口に繋がれた、一匹の子犬がいた。
拾ってそのままなのか、ずいぶん小汚い。
「ここで飼うっすか?」
「おうよ。名前は”チビ”だ」
この先輩が、犬をまともに飼えると思えない。
そう思った僕は、この店に出入りをするようになった。
すれ違えば遊ぶ程度の仲が、気がつけば。
犬を口実にして、僕の方から足げく通うようになっていた。


