「……多夜さん」
多夜さんは、カナコさん自身に興味はない。
この人の関心は、いつだって紫藤さんにしかない。
「今の紫藤さん見て、どう思います?」
ぴたりと手を止めた多夜さんには、やはり思うところがあるようだ。
「あなたが望んでいた紫藤さんって、アレですか?」
つい、言葉が粗くなった。
多夜さんは答えない。
「カエデさんを忘れさせたかったんですよね」
「………」
「あなたはいつだって、紫藤さんの弱さを許さない」
多夜さんは、紫藤さんに強さだけを求める。
弱さは、一切認めない。
カエデさんの存在が紫藤さんを弱くすると、この人はずっとそう思っていた。
だから。
カナコさんを使ってでも、過去から引き剥がそうとした。
多夜さんは、ただ。
紫藤さんに、カエデさんを克服させたい。


