余所者-よそもの-【 3 】



――リン、と音を鳴らし、今日もリビドーに足を踏み入れる。


「多夜さん。乙っす」


僕が来るまでの間、多夜さんがここを張っていた。


「………」


多夜さんはカウンターの内側でグラス一杯の水を飲みながら、相変わらずの無表情で僕を一瞥する。


いつもなら。

僕が来れば、入れ違いになってすぐにここを出ていく。


それが今日は違う。

時間を稼ぐようにゆっくりと水を飲み、何か言いたげに目線を落としている。


「カナコさん」


試しにそう声をかければ、多夜さんがこっちを見た。

どうやら話題は彼女の事らしい。


「……カナコさん、様子どうでした?」

「なにも」

「そうっすか」


沈黙が流れる中。

珍しく多夜さんの方から口を開いた。


「女は、生きてるのか」


さっき多夜さんの言った『なにも』。

カナコさんは今日、扉の中から声一つ漏らしていないらしい。


「昨日は、生きてたっすよ」

「………」


僕がそう返せば、多夜さんは特に表情を変えずここを出る準備をする。