地下の売人は車に近づくリンコを押し返すように、拳を振るった。
額が裂け、頬が腫れ上がる。
それでもリンコは怯まず、地下の売人の攻撃をあえて受け続けながら、相手の軽い身体を捕まえようとしているようだった。
地下の売人が高く跳ぶ。
空中からリンコの頭を狙って踵を振り下ろす。
――パシ。
リンコの手が素早く動くと同時、乾いた音が響いた。
「やっと、捕まえた」
地下の売人の細い足首を、片手でキリキリと掴んでいる。
ぶらん、ぶらん、と、逆さ釣りになった地下の売人の身体。
「やべ」
言葉とは裏腹に、彼は顔色ひとつ変えない。
もう一方の足で相手の顔面を蹴りつけると、その反動をつかって身体をひねり、地面に手をついた。
ぐれん、と一回転。
掴んだ足首が、リンコの掌の中で激しく捻じれる。
「……熱ッ!」
リンコの手が離れ、拘束が解けた。
その場に低く構えた地下の売人が、再びリンコに襲い掛かろうとしたときだった。
「……チカ様!!」
マンションから、片目の潰れたボロボロのデックが出てきた。


