「お前、あの人の部屋には入れるのか?」
「……いえ、無理です。鍵は紫藤さんしか持ってません」
「だったら隙を見て合鍵をつくれ」
「……はあ?」
「それしか方法がない」
……何を、勝手なことを。
「お前が紫藤を裏切らないのはわかった」
「だから、」
「だったらせめて、あの人の心を守ってくれ」
そう言うなり。
地下の売人は用は済んだとばかりに踵を返した。
「待て」
「………」
「僕は引き受けるなんて言ってない」
すでに背を向け、歩き出していた地下の売人が、振り向きもせずに言い残す。
「やるさ。お前は」
遠ざかっていく、その背中。
「……勝手すぎる」
呆れ果てながら。
僕は手の中に残された紙袋を、じっと見つめ直した。


