余所者-よそもの-【 3 】




「大切なものだからだ」


平然とした顔で、似合わない言葉を口にする。



「命よりも?」



シトウから彼女を奪うということは。

紫藤さんの逆鱗に触れる。


それに触れたヤツに訪れるのは、死だ。


尋ねた僕に、地下の売人は迷うことなく答えた。



「命よりも」



その言葉に、今度は僕が、白ける番だった。


なんて……つまらない。



「libido(リビドー)」

「………」

「……って、意味知ってます?」



首を傾げる地下の売人。

告げた僕の声を、冷たい夜風がさらっていく。



「強烈な衝動です」



「………」

だからなんだ、という顔。


どうせ、わかりはしない。

ハナから、理解なんて求めていなかった。


僕は続けた。



「僕が紫藤さんを裏切ることはない」

「………」

「アテにしてもらっていたようで申し訳ないですが。カナコさんを助けたければ、勝手に死んでください」