「この短時間でデックを突破するか……シトウのどこに、あんなバケモノ隠れてたんだろ」
地下の売人はそう呟くと、ポケットに手を差し込んだ。
そこから取り出したものを、わずかなスナップと共にシャキッ、と金属音を鳴らす。
折り畳まれていたそれが、勢いよく開いた。
出てきたのは、刃。
見た目も感触もとても覚えがある、冷たいナイフが地下の売人の手に握られていた。
「……ん?どうしたの?」
地下の売人が、肩の上から私を見下ろす。
私は必死で彼の服の袖を掴みながら、力いっぱい睨みつけた。
「やめて。リンコさんを傷つけたら……絶対に許さない!!」
叫んだ瞬間、彼はどういうわけか。
とても、悲しそうな顔をする。
「……え?『許さない』って、僕のこと、嫌いになっちゃうの?」
「………」
「いやだっ!!」
頬を膨らませて、ブンブンと首を横に振る。
まるで子供みたいな仕草に呆気にとられ、思わず手の力が緩んで、彼の袖を手放した。
……なんなの、この、人……。
そうして、――ダンッ、と。
地面を蹴り上げ、走り出した彼の手には。
もう、ナイフは握られていなかった。


