「お疲れ様っす」
飯の入った袋を手に下げた紫藤さんは「ああ」と一言返事をすると、カウンターの内側に入っていく。
「野間。傷薬はどこにある」
「ああ、後ろの引き出しっすね」
「ここか」
「うす」
消毒液や絆創膏、ガーゼや包帯のまとまったポーチが、カウンター台に置かれる。
続けて冷蔵庫を開けると、500mlのペットボトルを何本も台の上に並べていく。
ずらりと並んだボトルのキャップを一本ずつ、淡々と外した。
後ろの引き出しから小さな袋を摘み上げると、
「………」
無言のまま、水の中に、何かを加えていく。
「紫藤さん」
「なんだ」
「いい加減……それ、やめませんか」
「………」
紫藤さんはチラリと僕を一瞥すると、何も聞こえてないように手元だけを静かに動かし続けた。
作業を終えると、傷薬と水と食事を抱える。
これから入る扉の先。
じっと見つめる紫藤さんの目尻は柔らかく下がり、口元はわずかに緩んだ。
会いたくて、会いたくて、仕方がない。
そんな顔をつくってから。
――カチャン、と鍵を開き。
扉の中に、消えていく。


