千景は、一度大きく息を吸った。
「……最悪なのはここからだ。紫藤は今、彼女の身体と心の自由を奪ってる」
言葉のないユキの代わりに、潤が代わりに口を開く。
「どういう意味だ」
「日常的にドラッグを入れられてる」
端的に伝えられた事実が、鉛のように落ちる。
「………」
「………」
ユキも潤も、息をすることすら忘れたように、動かなかった。
「このままだと、あの人は壊れる」
千景の目は、逸らすことを許さない。
「紫藤からあの人を取り返す。今度こそ」
そのためには、この男が必要だ。
「お前は僕を『殺す』と言ったけれど、僕はお前を殺さない」
「………」
「どれだけ憎くて殺したくても、殺せない」
千景一人では、カナコは救えない。
だけど。
ユキ一人でも、カナコは救えない。


