ユキが再び拳を絞った。
千景はギリ、と奥歯を噛みしめる。
このまま殴られてもいい。
コイツに言ってやらなきゃ、とても気が済まない。
「……あの人が帰れないのはっ」
「………」
「弱いお前たちを守るためだろうが……っ!!」
――パシッ……。
乾いた音が、響き渡った。
隣に立った潤が、ユキの拳を止めていた。
「待て、ユキ」
「放せ」
「どうも話がおかしい」
「頭のおかしなヤツの話を聞く気はない」
「それでも、コイツはお前と闘う気がない」
「………」
「……お前だって気付いてるんだろ」
ユキは何度も殴ったし、殴ろうとした。
千景は感情の爆発した一発を除けば、ずっと防戦一方だった。
「俺はコイツの話を聞きたい」
「……いや、放せ。関係ない。コイツはかぁこに乱暴した」
「ユキ」
諭すような潤の声。
それでもユキは納得がいかず、その身体は千景にぶつかりたがっていた。


