余所者-よそもの-【 3 】



ユキの衝動。

背後でその声を聞いた潤は、やはりという思いと共に、息を呑んだ。


ユキは、千景と対峙するその瞬間まで、おかしなほどに冷静だった。

『かぁこを迎えに行く』と、今日という日に向けて淡々と準備を進める姿には、不気味なほど感情が抜け落ちていた。


カナコと出会う頃の、感情を知らないユキとも違う。

感情がないのではなく、何か得体の知れないものを、腹の底へ無理やり押し込めているような。

そんな異質な空気が、ずっと漂っていた。


潤は、そんな危ういユキを黙って見守ることしかできなかった。

下手に言葉をかけることすら、極限まで張り詰めた風船に針を刺すようで、恐ろしかった。


本来の作戦の手筈は、Z地区の戦力を削りながら、最後は全員で千景を追い詰めて、確保すること。


それなのに。

ユキは単身、千景を廃ビルの地下へと追い込み、人知れずこの部屋に閉じ籠った。


ユキの脳裏では、あの日のカナコの声が、今も痛々しくこびりついている。



――『酷いことを……されました』

――『怖いんです。だから私、行きます』



誰にも見せなかった。

誰にも触れさせなかった。


その感情が、今、目の前の千景へ向いていた。