余所者-よそもの-【 3 】



事前にAnBarの仲間と共有していた目的は、Z地区の奪取。

カナコがもう誰にも怯えず、帰れる居場所をつくること。


当然、その頂点に立つ千景を排除することだって、作戦の内にはある。


しかし。

ユキの口から語られたそれは、そんな合理的な殺意ではなかった。



「お前を……殺す」



絶対零度の声。



告げるとほぼ同時。

ユキは血走った目を鈍く光らせ、残像をそこに残す。

目で追えないほどの速さで、千景との距離を一気に詰めた。


いくら反応の良い千景でも、避けきるにはわずか数センチ足りない。


ユキの拳が顔面に食い込み、その反動で後方にふっ飛んだ。

ポーカー台に腰を――ドンッ!と打ち付ける。


ユキはすぐさま距離を詰め直し、千景の胸倉を掴み上げた。

だが、次の拳は振り下ろさない。

千景も、胸倉を掴む腕を振りほどこうとはしない。


二人とも、湧きあがる衝動を押し殺すように、睨み合った。


「………」

「………」


奇妙なほどの静寂の中。

ユキの口から、感情が零れ落ちた。





「――生まれて初めてなんだ。人を……殺したいと思ったの」