事前にAnBarの仲間と共有していた目的は、Z地区の奪取。
カナコがもう誰にも怯えず、帰れる居場所をつくること。
当然、その頂点に立つ千景を排除することだって、作戦の内にはある。
しかし。
ユキの口から語られたそれは、そんな合理的な殺意ではなかった。
「お前を……殺す」
絶対零度の声。
告げるとほぼ同時。
ユキは血走った目を鈍く光らせ、残像をそこに残す。
目で追えないほどの速さで、千景との距離を一気に詰めた。
いくら反応の良い千景でも、避けきるにはわずか数センチ足りない。
ユキの拳が顔面に食い込み、その反動で後方にふっ飛んだ。
ポーカー台に腰を――ドンッ!と打ち付ける。
ユキはすぐさま距離を詰め直し、千景の胸倉を掴み上げた。
だが、次の拳は振り下ろさない。
千景も、胸倉を掴む腕を振りほどこうとはしない。
二人とも、湧きあがる衝動を押し殺すように、睨み合った。
「………」
「………」
奇妙なほどの静寂の中。
ユキの口から、感情が零れ落ちた。
「――生まれて初めてなんだ。人を……殺したいと思ったの」


