地下の先には、一つの扉があった。
「………」
千景は何か腹を括るように、扉の先を見据えていた。
風を切る音に振り返れば、ユキが拳を振り上げている。
――パシ、と受け止め、その腕をギチギチと音が出るほど強く握り、引き寄せる。
目と鼻の先で凄み、囁くように言った。
「あの中に僕をぶち込みたいんだろ」
「………」
「なぁ?」
「そうだ」
「お前にノってやる。自分で入るから、飛びかかってくんな」
千景はユキの腕を放し、自ら扉へ向かった。
千景の手によって――ガチャリと開かれた、扉の先。
そこは、古びた廃ビルの地下にひっそりと残る、旧賭博場。
長らく人の出入りのない、埃っぽくて薄暗い地下室。
空間に残っているのは、今にも足が折れそうな一台のポーカー台のみ。
光は届かず、電気もない。
打ちっぱなしのコンクリートに覆われたそこは、ただでさえ冷え切った空気を一層冷たくした。


