――潤は、走っていた。
ユキは千景に近づくなり、不意打ちの一撃を食らわせた。
反動でよろめいた首根っこを掴み、そのまま廃ビルの陰へと引きずり込む。
二人の姿が、路地から消える。
着かず離れずの距離を保っていた潤は、ユキの突然の行動に慌てた。
消えた方向へと即座に滑り込むと、そこは廃ビル。
エレベーター前の、踊り場。
ユキと千景は、しばらくそこで拳を打ち合っていた。
どちらも引けをとらない。
しいて言うなら、潤の目にはユキが優勢に見える。
千景は、執拗なユキの拳を避け続ける一方で、反撃に出ないからだ。
ユキの足払いを避け、千景が高く跳ぶ。
その着地を待たず、ユキは空中の身体を――ドン、と突き飛ばした。
方向は、地下へと続く、階段。
千景は無防備な体勢のまま突き落とされたが、空中で身体をよじり、階段下で受け身を取った。
追いかけるように、ユキも階段を飛び降りる。


