余所者-よそもの-【 3 】




一人きり、残った店内。

リンコは呟いた。


「こんな日が、来るなんてね」


ヒールの音が響かない足で、出口へ向かう。

外に出るのが、怖い。



男として生きていた頃の自分を知っている人間に。

女として生きると決めた……今の自分を見せるのは初めてだった。



笑われるかもしれない。

気持ち悪いと、目を逸らされるかもしれない。


”お前、変わっちまったな”

そう言われるのが、何より怖い。


「………」


すると、いつかのカナコの声が聞こえた気がした。


――『リンコさんはリンコさんですよ』


ハッとした。

短い距離をトボトボと歩く今の自分は、なんて臆病でみっともないんだ。


……そうだ。

アタシは、アタシ。



黒く重厚な扉。

その無機質な冷たさに、額をそっと預けた。



「ねぇ、過去のアタシ。力を貸して」



静かに告げ、深く息を吸い込む。

胸を張り、一度だけ強く目を閉じてから、ずっと固く閉ざしていた扉を押し開けた。