「私……行かないから。ちゃんとここに居るから、だからシドにも言わないで」
野間はこめかみに青筋が浮かべると、僕を見た。
「……さっさと行ってください」
野間はデックから離れ、ゆっくりとママに近づく。
今にも倒れそうな彼女の身体を、脇から支えた。
野間は、僕たちを逃がそうとしている。
ママの意志を優先して。
僕は……ここで引く?
こんな状態のママを、ここに置いて?
「……なぁ。お前も助けたいんだろ」
「………」
「だったら、手を貸せ」
野間は目を伏せた。
「………」
長く息を吐いてから、
「できません」
声を落とす。


