身体が、動かない。
声も、出ない。
地下の売人が、ゆっくりとした動作で顔を近づけて。
頬と頬を擦って、脇から腕を差し込み、私の身体を抱き上げようとしたときだった。
後ろからかかった声に、地下の売人の動きが止まる。
「チカ様。はやくぅ……」
「なに。デック」
「これぇ……俺ぇ、勝てないかも」
ドンッ。
鈍い音が響き、デックの身体がなぎ倒された。
大きな影が、寝室のドアを塞ぐ。
「フゥ……フゥ……」
上下する肩。
綺麗に整えられていたはずの長い髪は乱れ、額からは血が伝う。
――リンコ……さん?
「オイ……なんだァ。オマエら……」
ゴウゴウ、と音が鳴りそうなほど。
重たく、低い声が、床を這った。
空気が、ピリピリと、痛い。
「……オレのダチに、何の用だァ」
リンコは腕で乱暴に口元を拭った。
赤いリップが、無惨に横へ引き延ばされ。
リップの線が走った腕が、シャツの襟首を引っ掴む。
――バリッ、と、シャツが破け、前が大きく開いた。
引き裂くと同時に、中に着こんでいた重たいシリコンバストを剥ぎ取り、
――ドンッ、と、無造作に床へ叩きつけた。
破けたシャツから、上半身が露わになる。
まるで鎧のように隆起した、圧倒的な筋肉。
この場にいる誰よりも大きな身体が、一つの呼吸で更に膨れ上がる。
長いまつ毛の奥で、鋭い眼光が――カッと見開かれた。
「――ブチッ、コロス……!!」


