「………」
――なにを……言ってるんだ?
確かに、彼女の意志が『ここに残る』と言っている。
ここで……守る?
何を……。
ママの……『大切なもの』。
握った拳に、爪が喰い込んだ。
なんで。
どうして。
「ここに居たら死ぬ!」
「それでも」
「命より大切なものなんてない!!」
奥歯がギリ、と鳴る。
こんな状況で、こんな状態で。
一体なにを守ろうって言うんだ。
「千景」
イライラと固めた拳に、ママの手がそっと重なった。
その柔らかい手は、どこまでも果てしなく、優しい。
「前に言ったでしょ」
「……なにを」
「大切なものは、何かと比べられない」
「………」
やめてくれ。
「一緒に行けなくて、ごめんね」
喉が詰まった。
……どうすればいい。
どうすれば、この人を助けられる。


