「シドは?」
「ママ」
「シドはどこ?」
「ママ、しっかりして」
「どうして千景なの?シドはどこに行っちゃったの?」
狂った視線。
狂った言葉。
「ねぇ、お腹空いた」
「ご飯……食べさせてもらってないの?」
「ううん。シドが帰ってきたときは食べさせてもらってるよ」
僕は息を飲んだ。
「だからシドが居ないときは、お水しか口にいれるものがなくて」
キン、と頭に嫌な予感が走る。
――もしかして。
僕は床に転がった水の一本を拾い上げて、自分の口に少量を流し込んだ。
ぺッ、と吐き出すと、舌に浸った不自然な後味。
「………」
身体がプルプルと震えた。
水には、ドラッグが溶けていた。
「クソ……野郎……」
紫藤は、彼女に食事もロクに与えず。
この水だけを、与えていた。
あれだけ欲しがっていた女。
いい加減な世話。
理由なんて、一つしかない。
「ねぇ、シドいつ帰るか知ってる?」
――飢えさせて、渇かせて。
最後に自分だけが与える。
ドラッグへの依存を、
自分への依存だと錯覚させるため。


