「まだしばらくコッチには居るの?」
鬼切のデスクにずらりと並ぶ、海外ラベルの怪しい小瓶。
何かの薬の原料らしいそれに目をやりながら、尋ねた。
「いや。近々オランダに行く」
国内の法律なんか知ったこっちゃない、と言わんばかりにどんな原料も掛けあわせて薬を開発するコイツは、よく海外に飛ぶ。
……今回はタイミングがよかったみたいだ。
「なんだ、まだなんか依頼あんのか?」
「ある」
「そんな感じだよな。どうした、その怪我」
白い布で吊った僕の右腕。
紫藤にやられ、ママを失った、憎い怪我。
「ちょっとね。脱臼してじん帯がヤられてる。今すぐに治したい」
そう言うと、鬼切は僕を睨みつけた。
「あのよぉ。てめぇには何度も何度も言ってるが。薬は魔法じゃねえ」
「………」
「薬を飲めばじん帯が元通り繋がるなんて都合のいい代物はねぇんだよ。物理的に切れてんだ、繋がるまで大人しくしてろ」
「ダメなんだ」
「あ?」
大人しくなんて、していられない。
「頼むよ、鬼切 獏。魔法みたいなお前の薬で、今すぐに僕を治してくれ」
鬼切はきょとん、と目を丸めた。
それは『お前どうした』って顔だった。
「フルネームで呼ぶな。中二病臭くて嫌なんだよ」
目を逸らし、多少照れたみたいに頭をガシガシ掻きながら、口を尖らせる。


