「そりゃ、誰んだ?」
「僕んじゃないよ」
中身を手にとって調べる僕に、鬼切はコトリ、とマグカップをデスクに置いた。
「だろうなぁ?てめぇはついこの間、ここで散々ヤク抜きしたもんな?」
ニヒ、と笑う、白衣の悪魔。
僕はげっそりとする。
「思い出させるなよ」
さっき夢を見てしまったせいだ。
地獄の時間を鮮明に思い出してしまう。
ついうっかりドラッグに蝕まれてしまった身体。
このドS野郎の元で毒を抜いてもらったおかげで、僕は今日も生きることが出来ている。
あれはかなり……しんどかった。
ぶっちゃけ死んだほうがマシだと、何度も思った。
表に出られるようになるまで、過去一番時間がかかった。
僕が長らく姿を消している間に、街は荒れに荒れ放題。
人もドラッグも全てが腐りきっていた。
「……この薬はデック用。僕が消えている間に、どっか海外から流れた新種のドラッグにヤられちゃってたから」
「デックって……ああ、お前の友達だっけか」
「まぁ、そんな感じ」
コイツは余所者。
ずっと街から切り離されたようなこの場所で、ひっそりと薬を創っている。


