アパートの軒下に転がっていたバイクに跨り、フルエンジンで向かう。
Z地区郊外のここから、更に街を離れた。
バイクを横切る街灯の数は徐々に減り、やがて静かな森へと辿り着く。
悪路に入る手前でバイクを止めて、徒歩に切り替える。
木々の合間から差し込む鋭い西日を浴びながら、道なき道を急いだ。
見えてきたのは、――旧食品工場。
裏手へと回り、重たい鉄扉の鍵を開け。
搬入口に入り、地下に続く階段を降りていく。
埃っぽい倉庫から、さらに二つ扉を潜った最奥。
ようやく、目当ての後ろ姿が見えた。
ぎしりとチェアの背もたれを軋ませて振り返るなり、ソッコーで怒りのオーラを放ってくる男。
「おおいぃぃ……チカァァァァ………」
――創薬師、鬼切(オニギリ) 獏(バク)。
無精髭を蓄えた小汚いツラ。
まるで似合わない白衣。
この人相の悪さと、よくわからない見た目から、僕はコイツのことを『ヤクザ医師』と呼んでいる。
ただ実際のところ、ヤクザでも医師でもない。
あくまで薬を創る人間。
創薬師を名乗るコイツは、この呼び名を認めていない。


