「俺を見ろ」
「………」
「カナコ」
「見てるよ」
こんな近くで、あなたのことを見てるじゃない。
なのにシドは腹を立てたみたいに「チッ」と舌打ちをしてから、顔を引き寄せた。
鼻の先を合わせたまま、私を睨みつける。
「カナコ」
「なに」
「カナコ」
「なによ」
なによ。
これ以上、何をしてほしいの。
「俺を呼べ」
「シド」
「………」
「……なに?」
わからない。
もう、わからないよ。
シドは私の顔を何度も自分へ向けた。
触れて、触れて。
何度も要求して。
視線も、言葉も、強引に奪うくせに。
それでも気に食わないと、唇から熱をぶつけてくる。
やがて私から視線を外したシドは、呆れたように言った。
「まぁいい」
「………」
「――全部、俺が忘れさせてやる」
シドのその言葉は、いやに耳にこびりついた。


