恋の終電列車

 「何か僕の事避けてますよね⁇あれから全然連絡もないし、前はあんなにここでばったり会ってたのにまるで避けてるみたい全然会えないし…。」

 切なそうにさえ感じる淀野さんの表情に私は胸を打たれた。そんな顔をされて何も感じないわけではない。でも、私があの日目にした光景が今も脳裏に残っていた。

 「淀野さんには彼女がいるみたいだから、もう連絡はしない方がいいと思って…。」

 私の言葉に淀野さんは目を丸くして驚いている。淀野さんは焦ったように私の目を真っ直ぐに見た。

 「何の話ですか⁇僕には彼女なんていませんよ⁇」

 今度はこちらが目を丸くする。でも真剣な淀野さんの目は嘘はついていなそうだ。淀野さんから視線を逸らした私はあの日見た事実を鮮明に話した。

 「でも、私見たんです。たまたま淀野さんの寮の前を通りがかったら、淀野さんと可愛い女の子が寮から出てきました。だから私は淀野さんには可愛い彼女がいるのかと…。」

 私が目にした事実は言い逃れ用のない明らかなものだ。私はまた下を向いて言いにくそうに言葉を発した。

 「えっと…それは彼女なんかじゃなくて妹です。妹は良く寮まで僕を訊ねてくるんです。働いてる会社から近いとかでたまに泊まっていく事もあるんです。」

 「えー⁉︎妹⁉︎」

 びっくり仰天驚いた私はヘナヘナと拍子抜けしてしまった⁉︎まさか妹さんを彼女と間違えていたなんて、勘違いしていた事が恥ずかしくなってしまう…。

 「それなら聞いてくれたら良かったのに⁈僕は突然松川さんから連絡がプッツリ来なくなったから、僕の方こそ彼氏ができて、それでもう連絡が来なくなったのかと思ってましたよ。」

 恥ずかしそうに言葉を発する淀野さんは顔が真っ赤だ。そんな淀野さんを見て私は可愛いとすら思ってしまった。

 「私に彼氏なんかいません。連絡しなかったのは、淀野さんが女の人と親しげにしていたのを見たからで、つまり女の人と歩いていたのがショックだったんです…。」

 私まで顔が赤くなってきてしまった。体中の体温が火を吹けそうなくらい暑い…。お互いに顔を逸らし合う私達は照れながらゆっくりとお互いの顔を見つめ合った。

 「と、取り敢えずやみつきカルパスでも買っていきますか⁇」

 「はい。良ければ家でお酒飲みながら一緒に食べませんか⁇嫌じゃなければ…⁇」

 ポツリと発した私の顔はやっぱり真っ赤だ。淀野さんの顔から笑みが溢れて私達は笑い合った。

 「はい。じゃあ是非⁈」

 淀野さんの嬉しそうな声が響き渡る。私達は二人で二人分のやみつきカルパスと缶ビールを買って帰った。

 





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