【新作】檻の外へ

放課後を告げるチャイムが鳴ると同時に、私の短い平穏は終わりを告げる。
「じゃあな、玲美。また明日」
「ええ。また明日、晴樹」
心配そうに見送る晴樹にわざとらしく微笑み返し、私は高層マンションのエントランスを抜けた。そこから先は、もうただの女子高生ではない。小鳥遊組の「暴力」としての時間が始まる。
物心ついた時から、私は晴樹と共に組の厳しい訓練を受けて育った。
可憐な美少女と持て囃される外見とは裏腹に、私の体は人を壊すための技術を徹底的に叩き込まれている。徒手空拳での制圧術はもちろん、銃器の扱いに関しても、組の幹部すら舌を巻くレベルだ。女の細腕だろうと、急所を的確に穿てば大の男を容易く沈められることを、私は嫌というほど知っていた。
だが、どれほど訓練されていようと、限界はある。
この三日間、私は地獄のようなスケジュールをこなしていた。
放課後は敵対する『御影組』の動向を探るための情報収集に奔走し、真夜中になれば、単身で御影組傘下の事務所へカチコミをかける。暗闇に紛れ、銃と体術を駆使して、殺意を剥き出しにして襲いかかってくる大の大人たちを次々と床に沈めた。その数、優に五十人は超えているはずだ。