【新作】檻の外へ

8歳年上の義兄である小鳥遊(たかなし)(かい)の顔を思い浮かべるだけで、胃の奥が冷たくなる。
魁は、私の従兄弟だったが私が4歳の時に私の兄になった。娘の私は若頭にはなれないから、当時から組員として飛び抜けて優秀だった彼を頭が養子にして、3年後、若頭に就任させた。
今では裏社会で、接近戦にも拳銃の扱いにも長けた、冷酷無慈悲な「死神」として恐れられている。
晴樹が私と同じクラスなのも、どうせ彼が裏で手を回したからだろう。
「監視って……。まあ、若の命令は絶対だからな」
晴樹は少しバツが悪そうに視線を逸らし、ガリガリと頭を掻いた。
「あー、それで……その、なんだ。……友達、できたか?」
「え?」
「だーかーら! 若から『玲美が孤立してねぇか確認しろ』って言われてんだよ! 俺だってこんなオカンみたいな真似したくねぇけど、報告しねぇと大樹の兄貴経由でシメられンだわ!」
耳まで真っ赤にして怒鳴る晴樹に、私は思わず小さく吹き出してしまった。
「ふふっ……ごめん。でも、無理。私には、普通の友達なんて作れない」
笑みを消し、自分の細い指先を見つめる。
この手は、すでに真っ黒に汚れている。普通に笑い合っている彼らに、私がヤクザの頭の娘で、人を脅して搾取する側にいる人間だと知られたら、どんな顔をするだろうか。