君を待つ。桜の下でいつまでも

「おはよ!」

不意に前方から声がした。思わず顔を上げると、その声の持ち主はこのクラスで一番活発な女の子である―――名前は、忘れた。

確か、せ……あや……なんとかだったような気がする。

基本人と、というより学校の人と関わりを持たない僕に、会話をしたことが無い人の名前を覚えろという方が鬼畜なのだが。

「……」

眉を顰めて彼女へと視線を向けていた。

彼女は妙にキラキラと輝いた目でこちらを見ていたが、僕はそれに反応することもなくさっと顔を伏せて読書に集中している風を装い、彼女に返事をする事はなかった。

要するにシカト―――無視―――というやつだ。

「あーっ!ひどーい」

明らさまに頬を膨らませて、拗ねたような表情をしている、が……知ったことか。

僕は態々口を開いて誰かと会話するという事に意味を見出だせないし、母親が無駄に心配するような事はしたくない。

それに、誰かの反応に気を使って会話をするということ程、面倒なことはない。

こうやって人と距離を置いて、関わらず、一人で過ごす方がよっぽどかマシに思える。

僕はきっと一人の時間を欲しているのだ。

あの家では一人になれる瞬間なんて存在しないから。