悪魔の生贄が救国の乙女になるまで

エルフリードが初めてレイアに会ったのは5歳の時だ。
身体の弱い母と喘息持ちのエルフリードの二人で、王都から離れたオイレンベルクで療養していた時のことだった。

5歳になり身体も少しずつ強くなり、その日は体調も良かった。
外に出てチョウチョを追いかけているうちに、隣の領地との境になっている雑木林に迷い込んでしまったのだ。
今から思うと、どうしてあんな場所で迷ったのかと思うような小さな林だったが、その時は世界が終わったかと思うような恐怖を感じた。

うずくまって泣いているところを、クララと山菜取りに来ていたレイアに見つけられたのだ。
「大丈夫?」
エルフリードを見つけたレイアは心配そうな表情を浮かべ近づいてきた。
声をかけられたエルフリードはレイアを見て驚いた。

サラサラの銀髪は木漏れ日を浴びキラキラと輝き、穏やかな深青の瞳を持つ少女は聖堂に飾られている救国の乙女にそっくりだったのだ。
もしかしたら自分は死んでしまっていて、乙女のいる世界に来てしまったのか。
一瞬、そう思った。
「きゅ・・・の・・め」
「えっ?なあに?大人の人は一緒じゃないの?どこから来たの?」
泣きながらだったから、レイアはエルフリードの言葉がよく聞こえなかったようだ。
「僕・・・は・・エル・・フリード。オイ・・レンベ・・ルクから・・・」
嗚咽まじりに答えるエルフリードにレイアは優しく話しかけてくれた。
「まあ、お隣から来たのね。私もオイレンベルクへの帰り方は分からないから、クララに聞きましょう。」
そう言ってレイアはエルフリードの手を取って、クララの元へと連れて行ってくれた。

そして3人でレーゲンスブルクの屋敷へと向かった。
途中、レイアは励ますようにずっと手をつないでくれていた。

屋敷に着きレイアと一緒にお菓子を食べ遊んでいたら、公爵家の者が迎えに来た。
クララが連絡してくれたのだろう。
もっとそこにいたかったが、使いの者は汗だくで急いで来たのが分かったので、その日は大人しく屋敷へ帰ることにした。
「レイア。また遊びに来てもいい?」
レイアと離れたくなくて、ドキドキしながら尋ねた。
「うん、いいよ。」
あっさりOKを貰い、それからは毎日レイアのところに通うようになった。